今回紹介させていただく名言はこちら!
道徳(論語)と経済活動(算盤)を両立させるべき、という考え方を示しています。
言った人

どんな人?
渋沢栄一(1840-1931)はは、幕末の混乱期に生まれ育ち、明治維新を経て日本の近代化を牽引した、類まれなる先見性と行動力、そして高い倫理観を持った人物でした。彼は単なる実業家としてではなく、「公益」を追求し、社会全体の繁栄を目指した思想家でもありました。2024年から発行される新一万円札の顔に選ばれたことからも、彼の功績と思想が現代においても高く評価されていることがわかります。
- 農家の生まれ、学問への情熱: 武蔵国榛沢郡血洗島村(現在の埼玉県深谷市)の豊かな農家に生まれ、家業の畑作や藍玉の製造販売を手伝いながら育ちました。幼い頃から学問に励み、特に従兄弟の尾高惇忠から『論語』をはじめとする漢学を学びました。この『論語』から得た倫理観が、後の彼の人生の指針となります。
- 尊王攘夷思想と幕府への奉公: 尊王攘夷思想に影響を受け、過激な行動を計画したこともありますが、その後、一橋慶喜(後の徳川慶喜)に仕えることになり、幕臣として才能を発揮します。
- 欧州視察で近代経済を学ぶ: 徳川慶喜の弟・昭武の欧州視察に随行し、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国を訪れます。そこで、近代的な銀行制度や株式会社制度といった資本主義経済の仕組みを学び、その重要性を痛感しました。この経験が、帰国後の彼の活動に大きな影響を与えます。
- 明治政府への貢献: 帰国後、明治新政府に招かれ大蔵省に入省します。銀行制度や租税制度の設計に尽力し、日本の近代国家建設に貢献しました。特に、日本初の銀行制度である「国立銀行条例」の制定を推進しました。
- 「日本資本主義の父」と呼ばれる所以: 1873年(明治6年)に大蔵省を辞任し、民間人として実業界に転身します。そして、日本初の株式会社である「第一国立銀行(現:みずほ銀行)」を設立し、その頭取を務めました。
- 約500社の企業設立・育成: その後、生涯で約500もの企業の設立や経営に携わりました。鉄道、電気、ガス、紡績、製紙、海運、保険など、多種多様な産業分野にわたる企業を興し、日本の近代産業の基盤を築きました。現在の日本の主要企業の多くが、彼の設立に関わっています。
- 「合本主義」の実践: 彼は、個人の利益追求だけでなく、社会全体の利益(公益)を重視する「合本主義」を提唱しました。これは、広く出資者を募り、社会全体で富を分かち合うという考え方で、株式会社制度の普及に貢献しました。
日本資本主義の父
渋沢栄一は『日本資本主義の父』と呼ばれています。
お金を稼ぐことが全てではないけど、結局のところ日本人として日本で暮らしていくということは、資本主義という大前提の上に成り立つ社会で生活をしていくということになります。であれば、どんなに稼ぐことを毛嫌いしていようとも、必ず金は必要になります。
金は恐ろしいです。その実態はただのフィクションにもかかわらず、正しく向き合わないと人生を棒に振るくらいなんてことはないほどのポテンシャルを持っています。ギャンブルで生活が立ち行かなくなる人や、金銭の貸し借りトラブルで関係が完全に破綻してしまう人たちがどれほど多いことか・・・
渋沢栄一は、こういった事実から目を背けることはしません。『金を稼ぐことは重要である』と真正面から提唱しています。金を稼ぐことは重要なんて考え方は、現代の価値観からすると当たり前すぎて凄さがイマイチ伝わらないかもしれませんが、当時の渋沢栄一の世代の人々にとってはかなり、かなり革新的な考え方です。しかも渋沢栄一は若いころに幕府に仕えていたので直されのことです。
『金は汚い』とか。『金をがむしゃらに稼ごうとすることははしたないから心を磨こう』といった道徳的で高尚な考え方は、耳障りはいいですが、とはいえ生活するためには必ず金は必要です。渋沢栄一はどこまでもリアリストなので、この事実をうやむやにしません。
論語と算盤(そろばん)
明治という激動の時代の中、人々の価値観は大いに揺さぶられました。道徳と経済活動のどちらが重要なのかといったテーマは、ただ激論を繰り広げるわけではなく、内戦にまで発展します。(西南戦争:1877年(明治10年)に、西郷隆盛が率いる薩摩藩士族が、明治政府に対して起こした内戦)
そんな激しい時代において、『道徳も経済活動もどっちも大切に決まっとるやろがい!』と言い切ったのが渋沢栄一でした。
それがかの有名な『論語(道徳)と算盤※そろばん(経済活動)』です。
論語とは
『論語』は、世界四大聖人である孔子の言行録であり、その思想の中心には「仁」と「礼」という二つの重要な概念があります。これらは互いに深く関連し、孔子が目指した理想的な人間関係や社会秩序を築くための基盤となっています。
- 釈迦(しゃか): 仏教の開祖。
- 孔子(こうし): 儒教の開祖。
- イエス・キリスト: キリスト教の開祖。
- ソクラテス: 古代ギリシャの哲学者。
「仁」:他者への思いやり
「仁」は、『論語』の中で最も頻繁に登場し、孔子の思想の核心をなす概念です。一言で言えば、他者への深い思いやりや愛情を指します。孔子とその弟子たちの対話を通して、「仁」は様々な角度から説明されています。
「礼」:社会秩序を保つ規範
一方の「礼」は、社会の秩序を保つための規範やルール、作法を指します。これは、単に形式的なものではなく、「仁」の精神を具現化するための具体的な行動様式であると孔子は考えました。
名言から入るのがおすすめ
論語と算盤で渋沢栄一が発信したメッセージは多くの人々の胸を打ちます。本質をとらえた内容はいつの時代でも通用するため、いまだに多くの人に支持され続けており、現代語訳バージョンや漫画版などといった多角的な展開を見せています。
『論語』と聞くと堅苦しそうな印象があるためとっつきにくいですが、私個人のおすすめとしては、『名言から入る』ことをおすすめします。論語は孔子が世に残した思想です。そして孔子は多くの名言をのこしています。論語をアタマから最後まで読み通すと体系的に孔子の考え方を学べますが、時間と労力がかかります。なので、孔子の残した多くの名言に触れてみて、直感的にいいなと思った言葉から、少しずつ掘り下げていくことで、気が付いたら論語と算盤のコンセプトがりかいできていた・・・という状態を目指してみてはいかがでしょうか。
ちなみに孔子が残した言葉で私が一番好きなのは『過ぎたるは及ばざるが如し』です。こちらに関しては別の記事で詳しく解説してます。
資本主義の上に成り立つ日本の社会で生活している身であれば、書籍、漫画、動画解説のどれでもいいので、『論語と算盤』のコンセプトは知っておいたほうが良いと、私は思っています。
渋沢栄一のことば
渋沢栄一は多くの名言を残しています。抜粋していくつか紹介させていただきます。
「無欲は怠慢の基である」
渋沢栄一が残した多くの名言の中に、『無欲は怠慢の基である』という言葉があります。『欲』を持つことを真正面から肯定していますね。『足るを知る』といった言葉でも有名な、老荘思想とは真逆の、儒学およびそこから発展した朱子学に基づく思想が渋沢栄一の考え方に大きく反映されていることがうかがえます。
「学問は一種の経験であり、経験は又一種の学問である」
座学で得た知識だけでなく、実践を通して得られる経験もまた重要な学びであり、その両方を繰り返すことで、人は一層強く成長できるという考えです。知識と実践の往復が、真の学びにつながると説いています。
「すべて世の中のことは、もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である。」
現状維持に満足せず、常に向上心と探求心を持って学び、挑戦し続けることの重要性を説いています。これは個人だけでなく、企業や国家においても言えることで、変化の激しい現代社会において、常に進化を求める姿勢が不可欠であることを示唆しています。
「正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。」
『論語と算盤』のコンセプトを分かりやすくかみ砕いた内容にした一言です。富を築く過程において、倫理的な規範から外れたり、他者を犠牲にしたりするような行為は、一時的な利益をもたらすかもしれませんが、長期的には信頼を失い、事業の継続を困難にすると警告しています。社会的な信用や人間関係を大切にし、公正な手段で得た富こそが、持続的な繁栄の基盤となることを示唆しています。
関連情報
偉人の生涯をざっと把握したいなら学習漫画がおすすめです!漫画だと思ってあなどるなかれ!意外と補足情報の文字量も多くいですよ。マンガのパートだけなら1冊30分もあれば読めてしまうので、一家に一冊、置いておいて損はないと思います。
動画で学ぶのもおすすめです!


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