この記事はオリエンタルラジオの藤森慎吾さんの半生を振り返ることができる【PRIDELESS(プライドレス) 受け入れるが正解】という本の要約です。
藤森慎吾さんいわく「プライドを捨てるというよりそもそもプライドを持ち合わせていない」らしいのですが、発想が斬新でした。
『捨てるようなプライドを、そもそも僕は持ち合わせていない。自分の中には何もない。空っぽだ。まずはそれを認める。』
本書より引用
著者の藤森慎吾さんは、だからこそいろんなことに挑戦できるのだと書いています。
要約1.相手を立てて否定(批判)は絶対にしない
著者の出演している番組やご自身のYouTubeチャンネルを見ればわかりますが、藤森慎吾さんは他人を下げることで笑いを取ることをしません。ネガティブな話題は笑いに変えやすいが、どうも自分の性質(たち)と合わないんだそうです。
『ひとの弱点を突っついていくよりも、相手が評価されたがっている部分をちゃんとピックアップして、褒めたりおもしろがったりすればいい。ネガティブな話題のほうがインパクトが強いのはわかっているけど、そこで勝負しないようにしよう。ポジティブなことだって、ちゃんと笑いにしていく方法はあるはずだ』
プライドレスより引用
結局最後は自分のアタマで考えて、自分なりに納得した道を自分で選んでいるかどうかが人生の満足度を左右する鍵なのかもしれません。プライドレスはとにかく読者に対して優しい本だと言う印象を受けました。
『闘って闘って、打ち勝つ!というような勇ましさが、いつも唯一の正解というわけではないのだ。』
プライドレスより引用
という言葉は、ストレスフルな社会に生きる心をふっと軽くしてくれる気付きを与えてくれます。
しかしながら、15年以上、芸能界という競争社会で生き延びてきた著者なりのプロフェッショナルな部分も時折差し込まれていて、それらの言葉はやる気を刺激してくれます。
『ちっぽけなプライドなんて捨てて、さっさと人に頼る。けれども人に頼るときには、前提としてしなくちゃいけないことがある。自分で出来ることはできる限りしてみてから』
プライドレスより引用
要約2.自分に足りないものを受け入れる
著者の藤森慎吾さんは自分自身のことを『生粋の媚び売りメガネ』と自負しています。
もともとは相方の中田敦彦(あっちゃん)に舞台でのフリートーク中に言われたフレーズだっけど言われた本人は妙に納得しているとのこと。
読んでいくと多少過小評価すぎるのではと思う節もあるけれど、藤森さんが言うには元々はただの素朴の田舎の少年であり、特に秀でた能力もなく周囲の顔色を伺うことをやめられない自分に軸のないごくごく一般的な人間なんだそうです。
早すぎるデビューとブレイクから実力不足による急降下を経て、自分の性質(タチ)を真っ向から否定して、お笑い芸人とはこうあるべき!という一般論をとにかく貫こうとした時期もあったようです。
テレビ番組を例にとっても、若手やお笑い芸人ではないタレントが話をしていたり、自分はスタジオにいて、ロケを見ていたりするシーンでも、全体の流れを踏まえつつもある程度の力技で『自分の』笑いにすることが芸人としては正解という風潮があるらしいですね。
しかし、藤森さんは最終的に自分の性質(たち)をありのまま受け入れて『絶対に人を下げたりしないで良いところを見つけて褒める』という今のスタイルを確立しました。その道の王道というものは確かにあります。けれど、絶対に王道で勝負しないといけないというわけではないということですね。
要約3.相手が求めているものを与える
人は誰しも、誰かから認められたいという欲求を持っています。承認欲求というやつです。
藤森慎吾さんはとても自然に相手を褒めます。褒めるということは、相手の存在や取り組みを認めるという行為です。
藤森さんは、芸能界にデビューしてから現在まで、ひたすら誰かを褒め続けているひとです。そもそもがお笑い芸人さんであり、活動の幅も広く年々メインとする活動を変えていくスタイルなので気づきにくいかもしれません。
しかし、プライドレスは藤森慎吾さんの半生を振り返ることができる内容になっているため、藤森慎吾さんの軌跡をイッキにたどることで何をモットーとして活動してきたのかが読み取りやすい構造になっています。
藤森さんのデビューはオリエンタルラジオというお笑いグループの『武勇伝』というリズムネタでした。説明するまでもありませんが、リズムに合わせて相方のあっちゃんこと中田敦彦さんがひたすら架空の武勇伝を連発していく中で、藤森さんがこれまたリズミカルに「すごい、すごい」と褒めたたえます。そして最終的には「あっちゃんかっこいい!」の一言で締めくくります。
お笑いのスタンダードである「ボケとツッコミ」ではなく、架空の武勇伝というボケに対して「褒める」という合いの手を入れ続けて褒め倒すというなんとも突き抜けた芸風でした。
その後いったんは人気が低迷してしまったオリエンタルラジオは藤森さんが編み出した「チャラ男」によって復活します。これも一見すると藤森さんがチャラ男になりきって場を盛り上げているだけのようですが、中身までしっかりみると「君かわうぃーね!」とひたすら女性を褒めていることが分かります。
チャラ男ブームが終わって再度オリエンタルラジオの人気が下火になったころ、突如「パーフェクトヒューマン」がすい星のごとく現れました。お笑いコンビなのにバックダンサーがいて、キレの良いダンスとセンターの中田敦彦の強烈なキャラクターが印象的なネタです。しかしこのパーフェクトヒューマンも、歌詞をよくよく聞いてみると、藤森さんがラップでひたすら相方のあっちゃんを褒めたたえ続けていることが分かります。しかもこの歌詞は藤森さんが一晩で仕上げたそうです。
読み終わっての感想
この本はまるで優しさと励ましのミルフィーユケーキのようだという印象を受けました。
とにかく自分を知り、理解し、受け入れることを基本的な姿勢とした、著者の優しさ哲学でいっぱいの優しさパート。どのようにして芸能界という厳しい業界で長年生き延びてきたのかが体験談とともに、つづられる励ましパート。それらが、いい感じに折り重なるように紹介されており、読んでいて飽きません。
ストレスなくサクッと読めるけど、印象にはしっかりと残る本でした。
少しでも興味を持っていただいたのなら実際にお手に取って読んでみることをおすすめします。
また、世間での自分のキャラと、本当の自分にギャップを感じていて、なにか息苦しさを感じているのであればこの本は解決のヒントをくれるかもしれません。
解決できるできないは個人の理解と自分の人生にどれだけ落とし込めるかによるところが大きいとは思いますが、エンタメ本としても楽しめる一冊にもなっています。
いろんな面からみても私にとっては買って損ではない一冊でした。
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