サンクコストとは?取り返せないコストとの向き合い方

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サンクコスト(埋没費用=Sunk cost)とは?
簡単に言えば投下してしまってすでに回収が不可能だとわかったコストのことです。

この記事の概要

・サンクコストとは
・サンクコストの代名詞『コンコルド計画』の解説
・サンクコストを受け入れて次のステップに進む方法

サンクコストを説明するにあたってとても参考になる本があるので紹介させていただきます。


『失敗の本質』という30年以上売れ続けているビジネス本の決定版とも呼べる名著があるのですが、そちらの解説本が『「超」入門失敗の本質』です。

※こちらがオリジナル版

 

オリジナル版『失敗の本質』は太平洋戦争でどのように日本軍が失敗したのかを有名な作戦ごとに分析している研究書なのですが、日本軍の失敗という枠にとどまらず、「組織」がどのように失敗するのかという分析にまで論理を展開しているところが「失敗の本質」が優れている点です。現代の組織、つまり経済活動を行うあらゆる企業にも適用できる「失敗しない為のマネジメントの極意」が随所にちりばめらています。これこそが、『失敗の本質』が長年ビジネス書としてずっと売れ続けている理由です。

とはいえ太平洋戦争の研究本という色が強く、30年前に出版された本なので現代の企業活動との関連性などはもちろんのことながら記されていません。そのミゾを埋めるべく執筆されたのが、『「超」入門失敗の本質(2012年発行)』です。

『「超」入門失敗の本質』では218ページからの『方向転換を妨げる4つの要素』という章でサンクコストについて解説されています。

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サンクコストとは?

「多くの犠牲を払ったプロジェクトほど撤退が難しい」

サンクコスト(埋没費用=Sunk cost)とは簡単に言えば投下してしまってすでに回収が不可能だとわかったコストのことです。

時間、労力、資金を費やしてきたプロジェクトが、実は「不適切」だった。このまま計画を進めても望ましい結果が得られないとわかったとき、その事実を潔く受け止めることができるでしょうか。

そんな時に、周りになんと思われようが、どんな評価を下されようが、組織全体のことを考えて「撤退」することを決断できる人こそが良いリーダーです。

このままこの計画を進めてもうまくいかない・・・とわかった時点で、計画的に投入されてきた時間や労力や資金がイッキに「犠牲」だったことになります。正確には、計画を中断した瞬間に「犠牲」だったことが確定します。

「時間、労力、資金を投入して今まで頑張ってきた事実」と「計画がうまくいくかどうか」は実は関係がありません。計画がうまくいくかどうかは時間と労力と資金が正しい目標に投入されているかどうかが重要です。

サンクコストの代名詞「コンコルド計画」

1962年に計画が発足した超音速旅客機開発計画が「コンコルド計画」です。

イギリスとフランスで共同開発された超音速旅客機の名前が「コンコルド」でした。最高速度マッハ2.0でパリとニューヨーク間がわずか3時間45分。鳥のくちばしのような先端を持つ旅客機でした。人類初の超音速旅客機の開発は、途中多くの不都合なことが判明しました。

コンコルド計画の開発実施後に判明したこと以下5点です。

・計画スタートは1962年だが機体開発が予定より大幅に遅れた

・開発費用が当初見込みを大幅に超過することが判明した

・販売見込みに対しても数字上の疑問が提示された

・航空ビジネスが旅客の大量輸送へとシフトしつつあった

・コンコルドは旅客わずか100人で燃費も非常に悪く時代のトレンドにそぐわなかった

開発の途中段階で計画の収支について改めて試算がされました。なんと今すぐに開発を中止して違約金を支払うほうが、開発を続けた場合よりも損失額がずっと少なくて済むという結論が出てしまいました。

しかし、極めて否定的な結論を「否定して」計画は続行されてしまいました。1969年に機体が完成。250機の製造計画に対してたった16機を国営航空会社向けに納入後、予想されていた通り全然売れずに1976年には製造中止になってしまいまいした。莫大な追加資金が投入されて最終的に当初の計画の5倍にも開発費用が膨れ上がったため、計画を中止しなかったことでさらに巨大な赤字を生み出すことになりました。

「採算が取れない」「時代遅れ」と分かった時点で、苦渋の決断でも撤退することこそ正解だったのです。

これは、ギャンブルで今までの負けを取り返すために、さらにお金をつぎ込んでしまう心理に似ているかもしれません。(私は20代のころにパチンコ/スロットにハマっていた典型的なギャンブルジャンキーだったのでこの心理は痛いほどよくわかります・・・)

あとは、外貨建ての生命保険なんかも、もしかしたら人生のサンクコストかもしれません・・・。(生命保険に入るなら掛け捨てでOK。資産を積み立てるなら投資信託のほうが間違いなく合理的)

「これだけの時間・資金・労力を投入したのだから、成功しないはずがない!」と思い込みたい心理が、引くに引けない心理状況を生み出すことになります。「今さら引き返せないと言葉では言いつつも、本当は引き返す決断を下さなければいけない」ことは計画の当事者が一番良く理解できているはずなのに。

サンクコストを受け入れて次のステップに進む方法

サンクコストを受け入れて次のステップに進む方法はいたってシンプルです。

「しっかり分析する、過ちを素直に認める、計画からの撤退を決断する」

これだけです。

問題なのは「誰が」その責任を持つかです。責任を持つべきなのはそのプロジェクトの責任者、つまり「リーダーです」

リーダーとは「決断する人」です。何を決断するのかといえば「目標」です。

「目標」とは、それを達成することによって組織が勝利することができる「指標」です。

正しい「指標」を特定して組織の「目標」とすることはもちろん大事なのですが、それ以上に重要なのは設定した「目標」が間違っていた時にどういった行動をとるのかということです。

1.しっかり分析する

時間、労力、資金を費やしてきたプロジェクトが、「適切」なのか「不適切」なのかはしっかり分析しないとわかりません。分析は「定性的なデータ」ではなく「定量的なデータ」でされるべきです。「これまでどれだけ頑張ってきたか」というような、人によって受け止め方が変わるような情報を「定量的なデータ」と言います。これでは誰もが同じ基準で分析および結論を導くことは不可能です。色々な評価の方法があるとは思いますが企業活動であれば「お金」に換算するのが一番シンプルな分析方法でしょう。お金に換算するということは情報を主観性のない数値に変換するということです。つまり「定量的なデータ」を用いて分析することができるということです。だれにとっても1円は1円ですからね。

2.過ちを素直に認める

どんなにわめいても、同僚や上司や顧客に泣きついても、しっかり分析した結果このまま続けても良い結果にならないと分かりきっているプロジェクトをどうにかすることはできません。感情や根性ではどうすることもできません。「戦略」の失敗を「戦術」で覆すことは不可能なのです。状況を打開することのできる秀逸なアイデアを思いついたり、外的な要因で計画そのものが続行不可能になったりすることがあるかもしれませんが、プロジェクトの責任を担うリーダーはそんな「偶然」に頼ってはいけません。

3.計画からの撤退を決断する

周りになんと思われようが、どんな評価を下されようが、組織全体のことを考えて「撤退」することを決断できる人こそが良いリーダーです。このまま計画を進めても、望ましい結果が得られないとわかっているのに、自分の評価だけを気にして計画を進めるとどうなるでしょうか?最終的に組織は必ず損をします。そしてリーダーは最終的に結果で評価されます。計画進行中にどれだけ良いリーダーを演じていても結果がついてこなければ良いリーダーとして長期的に評価を得つづけるのは難しいでしょう。

まとめ

今回は『「超」失敗の本質』で紹介されている「コンコルド計画」を軸にサンクコストの解説をしました。『「超」失敗の本質』もオリジナル版の『失敗の本質』も失敗とは何なのかという問いに対して、いつの時代でも通用する答えを提示してくれる名著です。

「成功したい!」と思ったときには、まずは「どうしたら成功できるだろうか」と考えるのが普通です。でも、成功する方法を探すよりも、まずは失敗しない方法をしっかり学習することのほうが大事です。失敗してしまう考え方や行動を徹底的に排除したほうが、実は成功への一番の近道なのかもしれません。

歴史の偉人もこう言っています。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

鉄血宰相ビスマルク

『失敗の本質』と『「超」失敗の本質』の概要についてはこちらの記事でまとめています。

「コンコルド計画」以外にも様々な現代の企業活動の事例を知ることができる『「超」失敗の本質』は本当におすすめです。もしも自分の下に部下や後輩が1人もいない方でも絶対に読む価値があります。あなたはなた自身のリーダーだからです。

リーダーとして失敗しないための本質的な考え方を教えてくれる『「超」失敗の本質』と『失敗の本質』。どちらか気になるほうから実際に手に取って読んでみてはいかがでしょうか。


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