イキナリですがこのふたつの絵画の右と左、どちらがお好きでしょうか?
どちらも作品のタイトルは「ラ・グルヌイエール」です。フランスに実在する公園です。同じ時期に異なる二人の作家によって製作されました。印象派を代表するフランスの画家、モネとルノワールです。この記事は二人が描いた「同じ絵」を見比べることで、自分が「自然」に興味があるのか「人」に興味があるのかを判断してみようというコンセプトです。
ちなみに、左がモネが描いた「ラ・グルヌイエール」です。左のほうが好きだという方は「人」よりも「自然」に興味がある性格をお持ちかもしれません。同じ風景を見ているのに、モネのほうは中央の小島がそこまで大きくなく、手前の水のが作品の半分を占めるような構図になっています。これは、モネが「人」よりも「自然」、とくに「水」を描写することにこだわっていると解釈できます。
モネの「ラ・グルヌイエール」
右はルノワールが描いた「ラ・グルヌイエール」です。右のほうが好きだという方はどちらかと言えば「自然」よりも「人」に興味があるのではないでしょうか?水の描写に画面の半分を使ったモネの作品に対して、ルノワールの場合は中央の小島で談笑する人々の描写が作品の中心になっているような印象を受けます。マネが描いた小島とくらべてルノワールの描いた小島は1.5倍くらいの大きさまでクローズアップされています。水の描写に関しては、確かに印象派的な描き方ですがモネの描写にはかないません。
ルノワールの「ラ・グルヌイエール」
モネとルノワール
モネは「印象・日の出」や「睡蓮」の絵画でも知られているように水の描写や風景といった『自然』を描く作家で、その特徴に対してルノワールは代表作「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」や「舟遊びをする人々の昼食」からも分かるように『人』を描く作家であるという印象が強いです。
モネ
1840年 – 1926年
「印象・日の出」
「睡蓮」
ルノワール
1841年 – 1919年
「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
「舟遊びをする人々の昼食」
印象派が分裂しても二人は仲良し
そもそも印象派は、これまでの古典的な絵画のあり方に疑問を抱き、今までとは全く違う手法で作品を表現することを良しとする価値観を持つ作家たちの集団です。例えば、屋外で作品を描くこと自体が当時としては革新的でした。ほかには、絵の具をできるだけ混ぜ合わせず、原色に近い絵の具の小さなタッチを並べる筆触分割も特徴的です。
一言で『印象派』と言ってもいろんな人たちがいます。バレエの作品を多く残したドガや、作品では高い評価を得られなかったけれど、金銭的、精神的に印象派の仲間たちを支えたバジール。すでに画家として成功していたけれど、古典的な芸術のありかたに疑問を投げかけて印象派を導いたマネ、などなど。
『バジールのアトリエ、ラ・コンダミンヌ通り』(1870年)という当時の印象派たちの様子がうかがえる絵画も残っています。 Wikiによれば左から右へ座っているのがルノワール、階段に立つエミール・ゾラ、マネとモネ(帽子着用)、中央の背の高い人物がバジールなんだそうです。
このように、印象派の人々はひとりひとりのキャラが立っています。価値観が革新的で、個性豊かなメンバーによって構成されている組織では、当然のように意見の食い違いが多く発生します。特に国(フランス)が主催する「サロン=官展」に出展するかしないかで意見が割れていたようです。
古典的な「サロン=官展」に対抗して印象派が主催していた「個展=印象派展」は1874年から1886年までの8回しか開催されていません。意見の食い違いやメンバーの入れ替わりによって自然消滅する形となってしまいました。
このように、けっして盤石な組織だったとは言えない『印象派』において、モネとルノワールの友情は確かなものでした。二人は若いころからの親友です。モネはその生涯で何回も住む場所を変えていますが、そのたびにルノワールはモネを訪ねて、時にはお互いを絵に描いたり、同じテーマで作品を制作することもあったようです。晩年は二人で旅をすることもあったようです。
著作物等の保護期間
モネとかルノワールの絵画をブログに使っていいの?と思われるかもしれませんが、著作権の保護期間のルールによれば問題ありません。
著作物等の保護期間は原則として著作者の死後70年なので、モネ(1840年 – 1926年)とルノワール(1841年 – 1919年)の場合はどちらも2022年の現時点で没後70年以上経過しています。
これが、もっと現代よりの作家であるピカソやダリなどになってくると、もちろん著作権があるため使用するには使用料が必要です。さらにピカソなんかは毎年更新らしいです。
著作権や著作隣接権などの著作権法上の権利には一定の存続期間が定められており,この期間を「保護期間」といいます。
これは,著作者等に権利を認め保護することが大切である一方,一定期間が経過した著作物等については,その権利を消滅させることにより,社会全体の共有財産として自由に利用できるようにすべきであると考えられたためです。
改正前の著作権法においては,著作物等の保護期間は原則として著作者の死後50年までとされていましたが,環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年法律第108号。以下「TPP整備法」という。)による著作権法の改正により,原則として著作者の死後70年までとなります。著作物等の保護期間に係る改正の概要については,以下のとおりとなります。
参考書籍
最近まで西洋美術が全く分からなかった私の理解を深めるのに、とても役に立ったビギナー向けの書籍を紹介させていただきます。
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