【クリエイター必見】読者ハ読ムナ(笑)の感想【有名漫画家の仕事術】

コラム
スポンサーリンク

この記事の概要

〇クリエイターなら『読者ハ読ムナ(笑)』を絶対に読むべき理由
〇『読者ハ読ムナ(笑)』の中で心に刺さったフレーズの紹介
今回紹介する本はこちらです
スポンサーリンク

クリエイターなら『読者ハ読ムナ(笑)』を絶対に読むべき理由

うしおととらからくりサーカス月光条例、そのほか有名な作品多数のマンガ家『藤田和日郎』先生をご存知でしょうか?1990年にデビューされているのでこの記事を書いている2021年の時点で画業30年以上の超ベテラン作家です。




マンガ業界は作品が売れるか売れないかがすべての超厳しい実力主義社会です。そんな業界の中、時代の移り変わりにも適用して、30年間ヒットを飛ばし続けるということは並大抵のことではありません。30年以上も週刊の少年誌でいくつもの連載を勝ち取り、ハードスケジュールをこなしつつ、ひとつひとつの作品を人気作として完結させてきました。まさに真の実力者です。技術と経験と実績とを兼ねそろえた、知る人ぞ知る超実力派のマンガ家さんなのです。

しかも、藤田和日郎先生の仕事場からは、『烈火の炎』の安西信行先生や『金色のガッシュ!!』の雷句誠先生や、その他メジャー雑誌で人気作となった作品の先生方を多数輩出されています。

前書きでも、漫画家は無数にいるけど、ここまで次々とアシスタントがプロ作家として育っている仕事場は極めて稀だと評価されています。(前書きを書いているのは藤田先生ではなく、藤田先生がデビューした当時に編集を担当されていて、現在は独立してライターとして活躍されている共著者の飯田一史さんが書いています。)『読者ハ読ムナ(笑)』は、そんな藤田先生の仕事術を包み隠さず教えてくれる『ネタバラシ本』と言えるかもしれません。

私は藤田先生の代表作である『からくりサーカス』が連載していた当時、大ファンだったので『読者ハ読ムナ(笑)』を読んでとても驚きました。なぜなら『からくりサーカス』をはじめとする藤田先生の作品は、ストーリーも画風も、理屈より感情が先行優先で描かれているような印象があったからです。

『読者ハ読ムナ(笑)』で語られる「プロの漫画家としての心構え」はその作風とは真逆でした。長年の経験に基づく綿密に練り上げられたマンガ家としてのロジカルな「あるべき姿」が赤裸々に語られています。

本の中で藤田先生は「本当はここまで手の内をさらしたくなかったけど、飯田さんに頼まれては断わるわけにはいかず・・・」というようなニュアンスを語っています。

「別に漫画家を目指してるわけじゃないから読んでもしかたがないのでは?」と思っているのであれば、決してそんなことはありません。漫画家とはすなわちクリエイターそのものです。しかも、話を作ってコマ割りを考えて(カメラワークを決めて)、キャラクターのデザインを決めて、仕上げもして・・・。といったように、映画を作るとなると何人ものプロフェッショナルが集まって分業するような仕事を、たった一人でこなすのが漫画家のすさまじいところです。

それだけ苦労して作り出した作品でも、結局は売れなければ漫画家として食ってはいけません。売れるということは人気が出るということです。人気が出るということは、読み手がほしいと感じるものをしっかり提供できるということです。

『読み手』の部分を『顧客』に置き換えると、そっくりそのままビジネス全般に通じる話になります。つまり、人にモノを売りたいのであれば『顧客』がほしいと感じるサービスをしっかり提供できる必要がある。ということになります。

「いや、別に人がほしがるものじゃなくて自分が作りたいと思うものを作りたい。」という方もいるかもしれません。趣味ならそれでいいです。しかし『読者ハ読ムナ(笑)』はプロの漫画家として、漫画を描くということ、つまり読み手とどう向き合うかがテーマになっています。よく言いますが、プロとアマの違いはお金が発生するかしないかです。この本は、ガッツリと、作品(商品)を提供して金をもらうプロとは何ぞやということを語っています。マンガでも小説でもブログでもyoutubeでも作詞作曲でも、作品を作っていることに変わりはありません。その活動を通して、1円でも稼いでやろうという気持ちがあるのであれば、その作品は、作品であると同時に商品にもなります。

「クリエイターなら絶対に読むべき!」と強くオススメする理由が分かっていただけたのではないでしょうか。

『読者ハ読ムナ(笑)』の中で心に刺さったフレーズの紹介

市場と自分の商品を理解する

まずは自分が勝負しようとしている市場を理解することが重要。漫画はあくまでも商売だということを理解する。買って読んでくれる読者がいて初めて成り立つビジネス。

みんながほしいと思うものを売ることができたらみんなは買ってくれる。『自由』とか『楽しい』という状態はヒットしたときに初めて手に入る。

自分の作品でビジネスがしたいクリエイターは商売するために作品を作っている。一番最初にそれを叩き込まないといけない。

基本はしっかり押さえる

いきなり『意外性』から入らない。

誰にでも出せるラーメンの作り方をマスターしてから、ラーメン屋さんになる。ラーメン屋さんになってから自分だけの味を追求する。

基本ができているからこそ、常識から入って、意外性を用意して、期待感通り終わる作品を作ることができる。

結果がすべて

読者は作品が出来上がるまでの過程など知る由もない。

その作品を世に送り出すまでにどれだけの時間がかかったか、どれだけ頭を悩ませたか、どれだけ労力を注ぎ込んだかは消費者には伝わらない。結果が全て。

自分と作品を「ひっぺがす」

自分の作品を客観的に評価する力を養う。とはいえいきなり自分と自分の作品を切り離して考えるのはとても難しいので、まずは好きな映画について互いに評価を交換する。

評価は順番ではなく一斉に出すことで公平を保つ。評価の基準は必ず理屈で説明する。なんとなく好きや感覚的に嫌いはNG。同じ映画(ストーリー、映像表現)を観ても人によって捉え方が全く異なることを身をもって体験する。

相手が自分の作品を嫌いだからと言って、自分の人間性まで否定されているわけではない。

自分の好きな作品と自分を切り分けるトレーニングを積むことで、最終的に自分と自分の作品を切り離すことができるようになることを目指す。結局のところ人は相手のことを信用していないと忠告をもらっても素直に受け入れることができない。

何を言われたかではなく、誰に言われたかの方が影響力が強い。良い関係性が構築出来ていないと言われたことは素直に入ってこない。

なにか言われたら『反論』ではなく『確認』しよう。新人の武器は質問すること。むしろ質問しかできない。相手のアドバイスを反復して、自分なりの言葉で言い換えてみて、相手と認識が合っているかどうかを『確認』する。

自分の作品を掘り下げて商品にするメソッド

自分の作品に対してとことん『なんで?』を繰り返す。

あれこれいっぺんにやろうとしない。人間1週間かそこらで新しいことに挑戦するのは一個か二個が限度。選択と集中が重要。例えば藤田先生の場合は『人の心を動かすストーリーをつくる!』ことしか考えない。

ストーリーが完全している状況がまずあって、そこから欠けさせるものを考える。欠けているものを埋めるために主人公が奮闘するストーリーが出来上がる。

そして必ず『自分の足で山を登る』こと。努力しない人には一生見ることのできない景色がある。

「たかが三ヶ月くらいで根を上げてどうする」

「ひとには息をつめて集中して一直線にやり狂わないといけないときがある」

「息抜きはクセになる」

かけ合いをさせるには向いている方向が反対の要因を組み合わせることが鉄則。うしおととら。ナウシカとクシャナ。ジョジョとディオ。実は悪役の方を先に考えてそいつの話が書きたいけどどうしても主人公にはできないから反対の性質を持ったヤツを主人公として話を作ることもある。

迷ったときは原理原則に立ち戻る

一つのことに集中して取り組んでいると頑張りを認めてくれる人が現れることがある。その人が手を差し伸べてくれたとしても、その先に自分が本当に行きたい目的地があるかを忘れてはいけない。けれども最終的に決めるのは自分。こればっかりは自分の人生に責任を持てるのは自分だけだから。

最後の最後は『好き』かどうかで判断するしかない。どこにいけばいいか迷ったら、立ち戻るべきは原理原則。自分が本当に求めていることから逃げない、それが一体なんなのかを理解し、受け入れて、さらけだすことが作品を『売る』ということ。

「おれは褒められたいんだ」とか「オレの作品を観て、かっこいいと思ってもらいたい」ということに気づき、認める。

自分だけの個性とは?

自分だけの個性とは何か?その問いに対する答えは外にはない、自分の内側にある。

人に聞きたくなるけど、それは答えをほかから持ってきた方がラクだから。でも個性は自分で自分の過去をを振り返らないと見えてこない。自分のことを知って、理解して、受け入れるのには時間とエネルギーが必要。

人間20歳を過ぎたらたっぷりといろんなものを持っている。クリエイターの体の中には川が流れている。たっぷり水がある。蛇口のついたホースでその川の水を自分の作品に引っ張ってこなきゃいけない。けど特に初心者はやりかたがわからなくて、水を外から持ってこようとする。

そうじゃなくて、自分の川から自分の作品に水を引っ張ってこなきゃいけない。

何でもかんでも鵜呑みにしない。人の意見は聞くべきだけれど、それは面と向かって話せる自分が信頼できる人の意見だけ。シャットアウトすべきはシャットアウトして自分の気持ちを奮い立たせる。

まとめ

今回は本の要約というよりも、自分の心に刺さったフレーズ集の紹介になりました。読者が新人のアシスタントとして藤田先生に弟子入りし、仕事を手伝いながら自分の作品の連載を勝ち取るために奮闘するというストーリー仕立てになっているため、要約しても『読者ハ読ムナ(笑)』の本当の良さが伝わらないかなと思ったんですよね。

この記事を読んで、刺さるフレーズがいくつかあったのであれば、ぜひ『読者ハ読ムナ(笑)』を実際に手に取って読んでみることをオススメします。マンガ家として、本当は読者に知られたくない戦略や戦術を、そこまで言っていいの?と思うくらい赤裸々に書き綴っているので本当に読み応えバツグンですよ。そしてなによりも、あなたが何かしらのクリエーターなら、「よし、自分も頑張ろう」と元気が出ること間違いなしの内容です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました