先日、ITパスポートという国家試験に10日間の学習期間で合格することができました。
国家試験のなかでも難易度は一番優しいレベルです。とはいえ一般的には合格まで100時間程度の時間がかかると言われている資格です(簿記3級やFP3級と同じくらい)。私はこの資格を約30時間の勉強でパスすることができました。
良い参考書やYoutubeチャンネルや過去問サイトに出会えたことも、もちろん合格できた理由ではありますが、もっと根本的な理由として「参考書も動画も過去問も最低3周は取り組む」ことに心がけたことが大きいかと思います。
脳が記憶を「忘れる」もしくは「定着させる」仕組みを理解できると、なぜ同じ教材に繰り返し3回取り組むことが重要なのかがわかります。繰り返し同じ情報に触れることで、脳がその情報を「短期記憶」ではなく「長期記憶」に定着させることをサポートするのがポイントです。
この記事の概要
・復習すればするほど忘れる割合を軽減できる
・「短期記憶」が「長期記憶」になるための条件
・短期記憶と長期記憶を理解してモチベーションを保とう
・復習は別の日にやろう(しっかり寝よう)
20分後には40%、1日経つと75%を忘れる
エビングハウスの忘却曲線をご存知でしょうか。
引用元:時空先生のドリルプリント
このように、新しく得た情報は、20分後には40%、1日経つと75%を忘れてしまいます。
ポイントは「新しく得た情報」という点です。よくよく考えてみると自分の電話番号や住所は過去何日間も思い出していなくても、いざ思い出そうとすればパッと思い出すことができます。
このことから、エビングハウスの忘却曲線で表現されている「忘れてしまう情報」と電話番号や住所のような「いつでも思い出せる情報」が異なるタイプの記憶であることが分かります。
資格試験勉強は「エビングハウスの忘却曲線に沿って忘れてしまうタイプ記憶」を「電話番号や住所のような思い出そうとすればいつでも思い出せるタイプの記憶」に置き換えていく作業とも言えます。
数分経てば忘れてしまう記憶を「短期記憶」
いつでも思い出せる記憶を「長期記憶」
と定義することができます。
復習すればするほど忘れる割合を軽減できる
エビングハウスの忘却曲線には追加情報があります。それは
「同じ情報に触れるたびに忘れる割合を軽減することができる」
ということです。つまり、復習した回数に応じて学習した情報が「短期記憶」から「長期記憶」に変わる確率が上がるということです。こむずかしい言い回しで書きましたが、要は復習すればするほど忘れにくくなるということです。
引用元:時空先生のドリルプリント
言われてみれば当然と言えば当然ですよね。自分の電話番号や住所なんかは、何回も思い出したり場合によっては書いたりタイピングしたりとその情報に触れる回数が多くなりがちです。何回も何回も思い出すことでしぜんと「短期記憶」から「長期記憶」になっていきます。だからいつでも思い出せるんですね。
「短期記憶」が「長期記憶」になるための条件
「短期記憶」が「長期記憶」になるかどうかは2つのトリガーがあります。それは
- 情報のインパクトが大きい
- 情報に触れる回数が多い
まず、「情報のインパクトが大きい」ことに関してですが、衝撃的な事件や出来事は記憶に定着しやすいですよね。このことに関しては直感的に理解していただけると思います。ただし、情報のインパクトは自分でコントロールすることができないか、難しいので勉強には使えません。
なので、重要になってくるのが「情報に触れる回数」になります。
「情報に触れる回数」は自分でコントロールすることができます。何回復習するかは自分で決めることができます。
短期記憶と長期記憶を理解してモチベーションを保とう
ここまでで、記憶は短期記憶と長期記憶の2種類があり、復習すればするほど学習したことを覚えていられる割合が増えるということを説明してきました。
脳は何度も触れる情報を大切だと判断します。初めて触れた情報は短期記憶に分類されます。たとえばITパスポートを勉強し始めた時のことを例にとってみると、脳は初めて目にする専門用語をすべて短期記憶として処理しようとします。
なので、1回だけ参考書を読んでも内容を覚えられないのは脳の構造上仕方がないことなのです。決してあなたの頭が悪いわけではありません。
しかし、たいていの人は1回ですべてを理解しようとしてしまいます。1回読んだり取り組んだりしただけで、完璧に覚えようとしてしまいます。これは、脳の仕組みに反した取り組み方なのでうまくいかなくて当然です。
1回で全部を理解できるのであれば確かに素晴らしいです。しかし、私を含むたいていの一般の方は一度情報に触れただけで試験に合格できるレベルで記憶を定着させることができません。1周目の途中でモチベーションが保てなくなって勉強を止めてしまうことになりかねません。
エビングハウスの忘却曲線を知らないと
「しっかり勉強したのに(1回だけしっかり読んだ)全然おぼえられない。自分はこの分野に関してセンスとか才能がないんだ・・・」
という思考におちいりがちです。自分に自信が持てなくなると学習へのモチベーションは急降下してしまいます。結果的に
「勉強してもムダムダ。だってどうせ自分に向いてないんだもん。もっと楽しいことやろっと」
というメンタルに切り替わってしまい。いつものようにスマホで楽しい情報を探しながらダラダラと過ごす生活に戻ってしまいます。
資格試験というか学習全般に言えることですが、一番の敵は難しい専門用語や学習範囲の広さではありません。一番の敵は「自分自身」です。自分自身というか、「ラクをしたい自分の脳」との闘いとも言えます。
どれだけ勉強に対するモチベーションを保つことができるのかが合格できるかどうかのカギとなってきます。
1回目は分からない部分があっても気にせずサクサク進めます。最後までたどり着くことを目標とします。
2回目は分からないところがハッキリと認識できるようになります。
3回目は分からないところに重点を置いて、理解できるまで掘り下げます。
3回同じ情報に触れるということは、この図でいうところの復習②までやったことになります。なにごとも完璧をようとするとグンとハードルが上がるものです。試験やテストにもよりますが、2回復習(情報に3回触れる)ことで8割くらい点が取れるようになれば充分だと私は考えます。
引用元:時空先生のドリルプリント
最初から3回取り組むことを前提としているので、1回目でわからないところが多くあっても
「わからなくて当然、いまはまだ短期記憶の段階だからとにかく最後まで到達すればいい」
という気持ちでいられるため学習に対するモチベーションを保つことができます。
2回目も
「まだ全部を理解できなくても大丈夫。3回目にはもっとしっかり理解できるようになってるはず」
といったように引き続きモチベーションを保てます。このタイミングでなぜ分からないのかを掘り下げて個別に疑問点を解消できるとより良いです。
実際3回目にもなると、かなりハッキリと理解できるようになっているはずです。
「かなり分かってきた!!」
復習は別の日にやろう(しっかり寝よう)
記憶の定着を話すうえで外すことができないのが睡眠と記憶の関係です。
睡眠は超重要です。なぜなら脳は寝ている時に記憶を整理するからです。1日に3回同じ内容を学習するよりも、3日に分けて3回学習したほうが「短期記憶」から「長期記憶」に移行しやすくなります。
試験やテストの前日に徹夜して情報を詰め込みまくる、いわゆる「一夜漬け」はあまり効果が期待できないということですね。
睡眠中はこのレム睡眠とノンレム睡眠が規則的に繰り返して発現しています。 脳はこの「レム睡眠」の時に日中インプットした情報を整理するなどのメンテナンスを行い、脳に記憶として定着させる働きをすると言われています。 レム睡眠の時は脳の一部は起きている時と同じように活動しています。
まとめ
エビングハウスノ忘却曲線をぜひ覚えて下さい。1回で覚えられないのはあなたの能力不足ではなく、脳の一般的な「仕様」です。
復習する回数(思い出す回数)が多ければ多いほど、脳はその情報が大事だと判断します。「短期記憶」から「長期記憶」に移行する確率が上がります。
「短期記憶」が「長期記憶」になるかどうかは2つのトリガーがあり、「情報のインパクトが大きい」か
「情報に触れる回数が多い」かのどちらかです。自分でコントロールできるのは「情報に触れる回数」、つまりは復習の回数です。
2回は復習(3回同じ情報に触れる)することを前提として学習に取り組みましょう。1回で覚えられないのはあなたの能力不足ではなく脳の「仕様」です。一番重要なのは学習のモチベーションを保つことです。
脳は寝ている時に記憶の整理をします。同じ日に3回学習するよりも、3日に分けて学習したほうが記憶に定着する確率が上がります。一夜漬けは避けましょう。
エビングハウスの忘却曲線と睡眠の重要性を意識して学習に取り組みITパスポートという国家試験に10日で合格することができました。
どんな感じで学習を進めたのか、具体的な記録をこちらの記事でまとめていますので是非あわせて読んでください。
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