【この記事の目的】
80:20の法則についてメリットを説明します。
少ない労力で一番大きな効果を得るための分析方法を解説します。
数値化のメリット・要因分析とアクションプランの決定テンプレートを紹介します。
なぜ80:20の法則が重要なのか
80:20の法則というものをご存知でしょうか?
正式にはパレートの法則という名称です。
パレートの法則(パレートのほうそく)は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した冪乗則。経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているとした。80:20の法則、ばらつきの法則とも呼ばれる。
Wikipediaより引用
この法則が頭に入っていれば、常に『最小の労力で最大の効果』を得ることを考えることができるようになります。どんなに長時間働いたとしても、働き方が間違っていれば成果を上げることができません。
悲しいことに日本の企業は、長時間働くことそのものを評価する風潮があります。どのような成果を出すかよりもどのように働くか、のほうに焦点が当たってしまっています。
いまでこそ少なくはなってきているようですが、いまだに
『長時間残業しているほうが偉い。定時で帰るような奴は根性がない。』
といったような歪んだ価値観が蔓延しています。
これはでは成果を評価されているのではなく、組織への忠誠心を基準に評価が決まるようなものです。先進国の中でも日本がとびぬけて生産性が低いことは、根底に根付く価値観の違いが大きな原因の一つではないかと思います。
しかし、結局、仕事をするうえで重要なのは結果を出すことです。
そして人間は理屈よりも感情で動く生き物でもあります。
何が言いたいのかというと、最終的には結果を出した人の発言力が大きくなります。結果を出していたない人が定時に帰ると、やる気がないとか根性がないとか思われます。しかし、結果をしっかり出したうえで、定時に帰っても、誰も何も言えません。
20:80の法則を知り、仕事で使えるようになることで、最小の労力で最大の結果を出すことができるようになります。
結果が出ると、あなたの行動や考え方は肯定されるようになります。
そして、最小の労力で最大の効果を得るように常に考えるようになることで、仕事はどんどん効率化されていきます。結果的に、無駄な残業は一切しなくてよくなります。
もう一点、80:20の法則の良いところをあげるとすれば、ビジネスをするうえで80:20の法則を意識して意思決定することは、上のレベルになればなるほど知っていて当たり前の知識だという点です。
80:20の法則から導き出されるアクションプランは、あなたの感情や感覚が関与できるスキがほとんどありません。記録から得られる情報を決まりきった方法で加工して、アクションプランを導き出していくので、正直なところやり方さえ間違えなければ誰がやっても同じ結果になります。
上司や顧客に、どのように意思決定をしたのか質問されたときに、80:20の法則をベースにデータを適切に分析してアクションプランを決定したと伝えれば、私の経験上ですがかなりの確率で納得してもらえます。
アクションプラン決定までの鉄板5ステップ
何かを改善するのも、問題を解決するのも、トラブルを対処するのも本質は同じです。
『何が起きているのかを正確に把握して、やり方を変える』これだけです。
もっと本質的に掘り下げれば
『仕事とは、誰かの問題を解決することである』
とも言えます。
何かを改善するという仕事があるということは、改善したいという問題を抱えている人の問題を解決する需要がそこにあるからです。
トラブルを対処する例はわかりやすいですね。トラブルが起きている状態は通常とは異なる状態です。トラブルを解決して、通常の状態に戻してほしいという需要があるからこそ、トラブルを解決するという仕事が発生します。仮に、トラブルが発生しても解決しなくて問題ない場合は、トラブルは放置され対処するという需要も発生しません。
偉そうに書いてみましたが書くだけは簡単です。
いざやるとなると、考えることが多すぎて何から手を付けたらよいのかわからないくなってしまうことも多々あります。そんなときのために、あらゆるアクションプラン決定に使えるテンプレ5ステップを紹介します。
1.項目の洗い出し
そもそも情報はデジタルで記憶されていることが好ましいです。記録する媒体を紙かデジタルか選べるのならデジタルにしておくことをお勧めします。後々の集計や分析のしやすさが紙とは段違いです。
仮にExcelなどで集計方法を選択できる場合は、なるべくシンプルなカテゴライズにしておきましょう。
『安全に問題あり』といったような、何が起きたのかを文章だけで記録するのは好ましくありません。
『項目:安全に問題あり』+『カテゴリー:安全』のように、項目の本質を表すカテゴライズを追加情報として加えましょう。
2.パレート化(件数を割合に転換)
パレートの法則を使って分析をするには、決められたルールに従ってデータを加工し、表を作る必要があります。細かいことを言うと図まで作成する必要ないのですが、どうせ他人に図を使って説明することになるので作っておいて損はないでしょう。
データの作り方はGoogleで調べればOKです。
『パレート エクセル データ』とかでググればいくらでも出てきます。
実際は、きれいに80:20になることはほぼありません。
ここで重要なのは、きれいに80:20の法則が当てはまるかどうかではなく
成果につながる要因は全体のなかでも少数に絞られることがほとんど
ということを理解することです。
仕事でデータを分析すると、8:2ではなく、7:3くらいに落ち着くことが多いですね。
まずはデータからパレート図のための表を作成します。
カテゴライズがシンプルにできているとエクセルのPIVOTテーブル機能を使えば一瞬で表の作成ができるのでぜひ活用してください。
今回は700件のクレームが発生してA~Jまで10の要因があった場合を想定しています。
要因は発生件数が多い順に並べます。
つぎにパレート表の作成をします。
作り方は『パレート エクセル 表』とかでググればいくらでもでてきます。
左の軸が発生件数で右の軸が割合の累計を表しています。
3.ABC分析(割合で数値化)
Step2で作成したパレート表を、0%から70%、70%から90%、90%から10%にグループ分けしました。
何%で区切るのかは最初の区切りが70%から80%のどこかになるようにすればOKです。
パレート図でそれぞれのグループを見てみると以下のような内訳になっています。
この中で対処すべきはAグループの要因AとBとCですね。
なぜならAグループの3つの要因A,B,Cを解決できるとクレーム全体の70%の要因を取り除くことができるからです。仮に、要因H,I,Jに着手してしまうと取り除くことができる要因の数は3つだけどクレーム全体のうち2%しか改善できません。同じ3件の要因に取り組むなら、A,B,Cの3つとH,I,Jのどちらの優先度が高いかは明白ですね。
下の図は上位Aグループに取り組むことで全体の70%の問題に影響を与えることができることをイメージ化したものです。
4.効果と難易度のマトリクスで数値化※場合によっては緊急性と重要性も考慮
ABC分析を通ってきているので、ある程度効果の検証はできているけれど、いったんAグループの各項目をさらに深掘りして分析します。効果と難易度の2軸で項目を評価します。
クレームの要因であれば、効果の部分に関しては件数で良いかもしれません。
難易度に関しては、組織によって基準が異なるので一概にこれ!とは断言できません。
私の職場で使用している基準をアレンジして紹介します。
難易度 High:他部署からのサポートが必要(1点)
難易度 Mid:自部署全体からのサポートが必要(3点)
難易度 Low:自チーム内で処理が可能(5点)
例えば
要因Bの場合、難易度がLowだとしたら、難易度3点×効果件数132件=スコア396点。
この場合、要因Aのほうが解決出来たら効果が高いことは間違いないありませんが、難易度も高いため解決までの障害が大きいです。であれば総合スコアの高い要因Bの優先度を上げて、即とりかかるという判断ができます。
5.誰が何をいつまでにやるのかを決定する(アクションプラン決定)
このステップは80:20の法則を説明する上では完全に蛇足になるのですが、あえて一連のステップに組み込みました。なぜなら、80:20の法則を使って分析する目的は、キレイな表や図を作ることでなく、問題を特定して解決するためだからです。問題を解決するためにはアクションプランを実施することが必要です。
どんなにキレイな表や図を作って、問題が特定できたとしても、問題を解決するために動かなければ全く意味がありません。
そして、問題を解決するために行動するときに必要なのが
『誰が、何を、いつまでに完了させるか』というタスクの設定です。
メールなり会議を開くなりして、誰が何をいつまでにやるのかを決定しましょう。会議は基本的に、誰が何をいつまでにやるのかを決める場です。もちろん、定例の報告会やブレストを目的とした会議もありますがそれはまた別の話です。
今回のように、アクションプランを決定したいのであれば、会議の目的はあくまでも誰が何をいつまでに実施するのかを決める場であることからぶれないように注意しましょう。
そのための判断材料として1~4までのステップが重要になります。
1~4までを飛び越して誰が何をいつまでにやるのかを決めようとすると、結局判断できないので1~4のなかで出来ていないステップまで戻ることになります。
ほとんどのことは70点~80点でOK
80:20の法則を実際の生活に落とし込む場合はどのように考えればいいのかも解説します。
世の中のほとんどのことは100点を目指す必要がありません。
だいたいのことは70点~80点取れればOKと考えましょう。そして、70点~80点とるためには、20の労力を投入するだけで良いということもセットで覚えておきましょう。
80:20の法則に従って考えると、テストで80点取るためには20の労力で良いことが分かります。ただ、80点から残りの20点を取って100点満点を目指そうとする場合、あと80の労力を注ぎ込む必要があります。
100点を目指そうとする姿勢は素晴らしいです。
しかし、いったん立ち止まって考えてみてほしいんです。
『本当にそのタスクで100点満点を取らなければいけないのでしょうか?』
もちろん、生きていれば絶対に100点を取らなければいけないようなシーンもあります。
けど、そんなに多いシチュエーションではないはずです。
世の中にはなんでも間でも100点を目指そうとする人が多いです。それか全く何もやらない人かのどちらかに大きく分かれているように感じます。
私なんかは完全に前者で若干ですが完璧主義の性格を持ち合わせています。これは、テストで最低でも70点や80点を取りましょうという話をしているわけではありません。勉強ができないので学生時代にテストで100点を取ろうとは思いませんでしたが、社会人となった今、資料を作るときに気を付けないと常に100点を目指そうとしてしまいます。
この場合の100点は、レイアウトや色使い、フォントといった見易さについてです。データの処理をしっかり済ませることはもちろんなのですが、必要なデータがそろってから、色やレイアウトやフォントなどを調整するのにスゴク時間がかかっていました。
80:20の法則を強く意識するまでは、どんな資料を作るのにも100点を取ることを意識してしまっていました。というよりも、100点とか80点とか気にすることなく、とにかく自分の気が済むまで資料をいじくりまわすことを時間の無駄とすら思っていませんでした。
いまでは、資料の重要度によって、どこまで作りこむかを考えるようにしています。チーム内で使う程度の資料であれば、データの分析をしっかり終わらせてそれ以上は触りません。20の労力投入で70点~80点を取れればで良しとするのです。
作りこんでいない資料を初めて使ったときは、いろいろ文句を言われるかなと恐る恐るでしたが、誰も何も言いませんでした。70点~80点でよい品質のものを、自己満足の為だけに100点に仕上げていただけだったということに心から納得できました。
仕事のあらゆることに20:80の法則を意識するようになってから、結果に直結しない無駄な作業の時間を多く削減することができるようになりました。
『ほとんどのことは70点~80点でよい。それ以上は結果に見合わない労力の投入が必要になる』
少なくとも1日1回は思い出すようにしています。
何かに挑戦するときも80:20の法則を意識しよう
逆に、70点~80点を取ることがとても大変なことだと思い、全く何もしない人も多くいます。
これはハッキリ言って損です。
なぜなら、100点取るまでには100の労力投入が必要ですが、70点~80点なら20の労力投入で足りるからです。興味があることや、やったほうがいいと思っていることは、あれこれ考える前にとりあえずやってみましょう。なぜなら20の労力を投入して70点~80点取ってから見える景色を確認して継続するかどうか考えたほうが効率的だからです。
もしやってみて、だめならだめでOKです。自分にはそれが向いていなかったと判断できるからです。人生の選択肢を減らすことができます。人生の選択肢を減らすことは悪いことではありません。むしろ良いことです。
何もしなければ、自分には向いていないという判断がいつまでも得られません。無限の可能性の中で苦しむことになります。ここまで『労力』という言葉を頻繁に使ってきましたが、要は『労力』とは『時間』そのものです。
何もチャレンジせずに、いつまでも「もしかしたら自分にはあれが向いているかもしれない、あれの才能があるのかもしれない」と考えているのは時間の無駄です。
人生の時間は有限です。誰だっていつかは人生の幕を閉じます。その時に、やりたいことがあったのに挑戦しなかったひとは人生の最後の瞬間までも「もしかしたら自分にはあれが向いていたかもしれない、あれの才能があったかもしれない」と考えることになってしまいます。
だったら、興味のあることや、いつかはやらなければいけないと思っていることに、できるだけ早く着手できたほうが良くないでしょうか?
80:20の法則は、新しいことに挑戦するときにも心の支えになってくれます。
70点~80点でいいんです。そのためには20の労力でいいんです。
そう考えるだけで「じゃあ、ちょっとだけやってみるかぁ~」という気持ちになりませんか?
以上が80:20の法則の紹介になります。
ビジネスツールとしても、ものすごく使えるし、新しいことに挑戦するときにも支えになってくれる素晴らしいツールです。この記事が少しでもあなたの役に立てば幸いです。
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