現状がツライから仕事をやめたいと思ってみても、やめたところで次の仕事が見つからないと生活していけない。そもそも仕事の内容が嫌なのか給料が低いから嫌なのか人間関係が嫌なのか、ストレスがたまりすぎていると冷静に判断できないものです。
ストレスが高い状態が長期間続くと、人間の本能は「生存モード」に切り替わります。つまり、脅威を遠ざける(自分が逃げるか、隠れるか、相手を消す)ことにしか集中できなくなります。
『仕事がツライ→やめたい』というのは、まさにこの「生存モード」がピークに達している状態です。冷静に判断すればやめるほどでもない状況でも、勢いに任せて会社を辞めてしまって後から後悔したくはありません。
この記事では、3回の転職、4社で正社員として働いたことがある経験のある私が、『正しい逃げ方』について解説させていたきます。
地元の弱小日系企業町工場で最低賃金レベルだったこともありますが、紆余曲折あって現在ではグローバルに展開している外資系企業に就職し、日本人の平均以上の年収を得ることができるようになりました。
紆余曲折あってと書きましたが、今振り返ってみて一番良かったなと思うことは『逃げるべき時にしっかり逃げた』という点です。もちろん、新しいスキルや知識を得るためにある程度努力はしましたが、それ以上に「あの時、逃げるという決断をしてよかった」と思えることのほうが印象に残っています。
『逃げる』ことは負けを認めることではありません。『逃げる』とは、冷静に状況を判断して「危機から距離を取る」ことが最良の選択であると判断し行動に移すことです。
それでは『正しい逃げ方』を5ステップで解説していきます。
Step1・書き出す(自分との対話)
ツライ、と感じていることを書き出してみましょう。
ストレスを抱えていると何か解決方法がないか考えようとするのは自然な反応です。ただしストレスが抱えきれないほど大きくなってしまっている場合は冷静に悩みと向き合うことが難しいものです。
現代社会のストレスの大半は考えただけ解決できるようなシンプルなものではありません。
仮にある一定の解決策を思いついたとしても、気が付くとまたぐるぐると同じことを考えてしまうこともあります。
そんな時は、とにかく思いのままに不安に感じることを紙やスマホのメモ帳に書き出してみることをオススメします。
具体的な解決策が思いついていなくてもオッケーです。ちょっとくらい誤字脱字があったり、文法がめちゃくちゃでも構いません。
この「不安を書き出す」というプロセスの本質は人に見せるためのスバラシイ文章を書くことではありません。脳が不安について考えることを止められない暴走状態にブレーキをかけることが目的です。
脳は、自分が思っているよりも割と単純でバカです。
不安に思うことがあるといつまでもぐるぐると同じことを考えてしまいます。
不安に思うことを書き出すことで、「あの不安に感じていることはあそこ(紙やスマホ)に書き出したから、もう自分では考えなくて大丈夫」と思うことができます。
「いやいやそんな単純なハナシじゃないんだよなぁ」と思うかもしれませんが、不安を書き出すことをやったことがないのであれば是非試してみてください。
自分でも信じられないくらい心の負担が軽くなることを実感できるはずです。
もっと効果的に書き出す手法を活用したいのであれば、書き出して数分たったあとに、自分で自分にコメントしてみることをオススメします。字の色を変えると効果的です。
いくつかの書き出された不安にたいして、ひとつひとつ冷静にコメントを書き込んでいくと、本当に自分を苦しめている不安の種は1つか2つだけだと気付けるはずです。
繰り返しになりますが、書き出した内容は誰かに見せる必要はありません。
Step2・家族に打ち明ける(家族との対話)
1の不安を書き出すプロセスだけでもかなり心が軽くなるケースが多いのですが、それでもやっぱり不安にとらわれてしまうのであれば家族に打ち明けましょう。
書き出しても不安を払拭できないのはかなり危険なウツのサインです。
これから先の人生を生きていくうえで、自分のウツと向き合っていかなければいけないかもしれません。そんな重要な分岐点で、家族の理解が得られているかいないかはかなり大きな違いになります。
今まで挫折を経験してこなかった人は特に、自分が「一般的」なレールから外れることに強烈な嫌悪感を感じます。誰にだって、学生として、社会人として、家族の一員として「あるべき姿」のイメージを持っているはずです。
家族に不安であることを打ち明けるのは、『私は「あるべき姿」でいることができません。』という告白でもあります。
私の経験上、家族は自分が思っているよりも告白を温かく受け止めてくれます。『あなたが思う自分があるべき姿』と『家族があなたに期待する姿』は違います。
そして、ほとんどのケースで、『あなたが思う自分があるべき姿』は自分でハードルを上げすぎていることが多いです。
- 「どんなにつらくても反発してはいけない」
- 「どんなに大変でも受験に成功しなくてはいけない」
- 「どんなに苦しくてもいまの会社をやめてはいけない」
だってそれが『あるべき姿だから』
という考えがアタマのどこかにないでしょうか?もしあったとしたら、それを決めたのは誰でしょうか?
自分自身じゃないでしょうか?
ツラかったら立ち止まって休んでもいいのは当たり前です。けがや不調をかかえているのに走り続けたら体が壊れてしまいます。心だって同じです。
『あなたが思う自分があるべき姿』という固定観念に正面から向き合うために、不安を家族に打ち明けるというプロセスは有効です。
Step3・心療内科に通う(公的機関からオスミツキをもらう)
1、書き出す。2、家族に打ち明ける。まで実行しても不安な気持ちが払しょくできないのであれば、もうこれは本格的な心の病なので病院に行くことをお勧めします。
注意点としては、心の問題を主に扱う心療内科は、心を治してくれるところではないという点です。不安から解放されるには、不安の原因となっている根本的な要因を特定してとりのぞくしかありません。
根本的な原因は自分の実力不足だったり、上司の人間性だったり、組織の文化だったりと十人十色です。
心療内科に通うことで、運が良ければカウンセリングを通して不安の原因の特定ができるかもしれません。
ただ、その不安の原因と正面から向き合って、どうするか決めなければいけないのはあなた自身です。
心療内科に通う最大の目的は「精神疾患があると診断される」ことです。
うつでも適応障害でもなんでもいいので、精神疾患と診断されれば、次のステップの「4・会社に打ち明ける」で有利に立ち回ることができるようになります。
Step4・会社に打ち明ける(所属する組織[収入源]との対話)
1、書き出す。2、家族に打ち明ける。までやってみても不安を払しょくできないあなたは心療内科に通ってうつなり適応障害なりの「お墨付き」をもらったはずです。
この段階まで来たら、会社(収入源)に打ち明けるべきです。
自分が今の環境では精神に不調を来していること。心療内科に通って精神疾患の診断を受けていることを伝えたうえで、環境の改善を依頼しましょう。
精神に不調を来している期間が長くなると、まず最初に同僚に打ち明けたり上司に相談したりする人がいますが、あまり良い手段とは言えません。
なぜなら、「精神疾患」というお墨付きがない状態で、自分の不調を訴えたところで
「考えすぎなんじゃない?」
とか
「どっかで有給取ってゆっくりすれば?」
とか、あまり重く受け取ってもらうことができません。
ひどいケースだと
「おれもお前くらいの頃は大変だったよー」
といったような自虐風自慢話に付き合わされる羽目になったり
「根性が足りねぇんだよ!」
といったような理不尽な精神論で詰められてしまいかねません。
なので会社に打ち明ける場合は「精神疾患を患っている」というオスミツキが必要不可欠なのです。
心療内科で精神疾患の診断が出ているという事実を突きつければ、会社も適当な対応でお茶を濁すことはできないはずです。
仕事量の調整や、仕事内容の変更、ポジションの変更などを打診しましょう。
Step5・環境を変える(物理的に距離を取る、実際に逃げる)
1から4のステップを踏んでも状況が改善されないのであればいよいよ自分の命を最優先に考える段階です。
物理的に逃げましょう。
車通勤なら会社とは逆方向に車を走らせるべきタイミングです。電車通勤なら会社がある方面とは逆方向の電車に乗るべきです。
辞職届や退職届をどうやって書いていつどこで誰に打ち明けるかなどと考えている場合ではありません。
もう明日から職場に行かなくていいです。無断欠勤上等です。
もしも目の前に、あなたに理不尽な態度で接してくる上司や同僚がいたら、話の途中でもなんでもかまわないので1秒でも早くその人から離れましょう。
つまり、その人と真反対の方向にくるっと方向転換して、全速力で走って逃げろ!ということです。
ここまで大げさではないとしても、所属する組織との付き合い方を真剣に考えるべきタイミングであることは間違いありません。
あなたが無断欠勤しても会社は存続していきます。あなたに何かあると会社が立ち行かなくなるようでは組織のマネジメントが破綻していると言えます。
とはいえ、例えば仕事ならちょっとストレスを感じるたびに転職していたらいつまでたってもスキルやノウハウが身に付きません。この記事で解説した順番で『逃げる』ステップを段階的に踏んでいけば、ホントウに『逃げる』べきなのか、まだとどまって様子を見るべきなのかが冷静に判断できるはずです。
まとめ
1.書き出す
自分自身との対話です。悩みを書き出すことで脳がぐるぐる同じことを考えてしまう負荷を軽減する狙いがあります。
2.家族に打ち明ける
家族との対話です。「〇〇するべき」「〇〇ねばならない」という自分への思い込みを解除してありのままの自分を受け入れるプロセスです。
3.心療内科に通う
公的医療機関に「精神を患っている=精神疾患」というオスミツキをもらうことが目的です。医療機関はストレスやうつ症状を取り除いてはくれないのでその点は注意です。
4.会社に打ち明ける
収入源となる組織にたいして「精神疾患」というカードを盾に状況改善を求めることが目的です。
5.逃げる
1~4のステップを踏んでも状況が改善されないのであればいよいよ具体的に「逃げる」べきタイミングです。
さいごに
正しく逃げるための5ステップを解説させていただきました。
『逃げる』ことは悪いことではありません。自分の置かれている環境と、自分の持っているカードを照らし合わせて「勝てないゲーム」だと思ったらサッと逃げるのが一番です。
「いまはツライけど、ここで頑張り続ければいつか必ず努力が報われるはず」という考え方は、年功序列が当たり前だった一昔前の時代には一定の評価を得ることができたかもしれません。しかし、現代のように移り変わりの早い環境では「思考停止」と言わざるを得ません。
悪いストレスが高い状態が長期間続くと、精神か体かどちらかを壊すことになります。
悪いストレスは「自分のことが嫌いになる」ことから生じます。自分が思い描く理想の姿や状況や環境と、いま現在の姿、状況、環境にギャップがあるときに、人は自分のことが嫌いになってしまいます。
たった1回の人生で自分のことが嫌いになってしまうことほど不幸なことはありません。私が思うに、現代病とも言われる「うつ病」の最大の原因は「自己嫌悪」です。
自分のことを否定したくなるような「環境」が問題です。あなたは絶対に悪くはありません。
中毒性の強い酒やたばこやギャンブルでストレスをごまかしても何も解決しません。自分の心と体を痛めつけるだけです。
『逃げる』ことは決して後ろ向きな行動ではありません。人類がサバンナで狩りをしていた時代では、危機から『逃げる』ことが唯一の生存手段であるケースが多々ありました。
しかし時は流れて人類は文明を築き、支配する側とされる側に分かれました。ごく少数の支配者側が、支配される側に『逃げる』ことは悪いという価値観を植え付けました。日本では江戸時代の徳川幕府が仏教に代わって朱子学を大々的に取り入れたあたりからこの流れが加速していったようです。
『逃げる』ことは負けを認めることではありません。『逃げる』とは、冷静に状況を判断して「危機から距離を取る」ことが最良の選択であると判断し行動に移すことです。
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